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『複雑な世界、単純な法則–ネットワーク科学の最前線』を読了。この本は、ネットワークの複雑性はいくつかの法則によって生み出されている、ということを素人にもわかりやすく紹介している情報科学・複雑系の入門書で、ぼくたちの世界がなぜ今の形態をとっているのか、新しい視点を与えてくれる本である。 たとえば、第1章で紹介されている「六次の隔たり」について。「六次の隔たり」とは、人々がランダムに繋がっているのだとすれば、六段階以内にすべての人と繋がることができるという理論である。つまり、知り合いの知り合いを6人たどっていけば、ぼくもアフリカの見知らぬおじいさんと、実は繋がっているということである。さらに興味深いのは、そのような小さな世界では、「弱い絆」こそが重要であるという。 重要なのは、人々は明らかに、世界全体にわたってランダムなつながりをもっているわけではないということである。そして、社会のつながりが一つの「まとまり」を作り、「クラスター化」が生じる と本文中にあるが、ぼくたちの世界は、クラスター化した集団が点々とし、バラバラの状態で存在しているのではない。そこに「知り合い」というような「弱いネットワーク」が結びつくことにより、クラスターを構成する要素間に繋がりが生まれ、それぞれのクラスターが相互に繋がり、巨大な、しかも偶然性や意外性に満ちたネットワークになっているというのだ。 というように目が覚めるようなさまざまなことをこの本は語っていて、すでにお腹いっぱいなのだけど、個人的には以下の文章で語られているような内容も興味深かった。 本書で伝えたいことの1つは、人間の社会に数学的な法則と意味あるパターンを発見できるかもしれない、ということなのだ。社会・政治科学者の故ハーバート・サイモンがかつて述べたように、科学の目的は「秩序なき複雑性に意味ある単純性を見出すこと」である。 ネットワークに関するこうした研究の究極的な意義は、単に新種の構造を突き止めて、その構造を記述する方法を明らかにしたり、微妙な差異を見つけて従来のネットワーク概念との違いを理解することにのみあるのではない。もっと重要なのは、こうした発見から世界、それも現実的な意味での世界について何を学ぶことができるかである。 複雑性の科学が真に目指しているものは、あらゆる種類の複雑なネットワーク内にパターンを発見し、われわれ自身を向上させて世界をよりよいものにするために、こうして得られた知識をどのように利用できるかを突きとめることだ。 これらの文章で述べていることは、先日のNS大の講演会で平田晃久さんが語っていたことにも通底することであり、昨今の建築界で顕著になってきたパターニズムの考え方や、近代建築で語られてきた「部分と全体」の話にも繋がっていく。この本に漂っている「匂い」みたいなものは、今後いろいろと時間をおいて考えてみる必要があると思う。たまには背伸びしてこういう知識を貯えておくことも大切だなとも思った。
by tzib
| 2006-07-25 23:25
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