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「パチンコパーラー1」の前を通りかかる。建築に携わる人ならば、一度は見聞きする妹島和世設計「パチンコパーラー1」。残念ながら、ここで衝撃の事実をお送りしなければなりません。それは…あの内装が完全に改装されているという事実。内部壁のステンレス鏡面。内部空間に鮮やかに貫入していた構造体。企業ロゴをあしらったプリントインテリア。それらは跡形も無い。ガラスのファサード、黄色い壁、入り口のレベル差のみを残して完全に消去。視覚を惑わせ不思議な感覚を誘発した内部空間は、影もかたちも残っていない。ふーっとため息をついてしまう。おとなの事情が絡んでいるのかもしれないが、やりきれない思いがこみ上げる。建築の見たくない側面と現実。ちなみに「パーラー2」も死亡。「パーラー3」と「K本社ビル」は何とか無事です。
「パーラー1」を見たついでに、妹島和世さんが子供の頃住んでいた場所を訪れてみる。そこは日立製作所の社宅があった場所で、太平洋が望めるゆるやかに傾斜した土地に、1層の白くて小さなヴォリュームがずらっと建ち並んでいた場所だ。高度成長期の夢の街。今ではそのヴォリューム群もほとんど残っていないが、記憶の像を取り出して目の前の風景に重ねて見ると、それはまさしく妹島建築のもつ情景?と重なる。原風景とまでは断言できないけれど、かつて栄えたこの場所は、妹島建築に多少なりとも影響を与えているのかもしれない。 ぼんやりと原風景について考える。磯崎新は戦後の焼け野原という「廃墟」、妹島和世はリアルなこの風景?ぼくたちの世代はどうなのだろう。ブラウン管の向こうや低品質な紙の向こう側に広がった虚構の世界。湾岸戦争、ユーゴスラビア、ソマリア、阪神大震災、サリン事件、9・11、アフガニスタン、イラク、スマトラ島…メディアを通して伝えられる「廃墟」の映像。現実だが決してリアルな現実ではなく、限りなく仮想現実に近い「廃墟」。原風景の共有化。うーんよくわからないな。まあとりあえず太平洋は今日もきれいだ。庭の梅が咲いてきた。春の足音がゆっくりと聞こえる。
by tzib
| 2005-03-18 22:22
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